Comment lui dire

アラビアンコースト

音楽劇『道』2018/12/12S @日生劇場

まず最初に私はスマオタそして剛担であり、俳優クサナギツヨシは天才だと思っていることを記しておく。
(どれくらいスマオタかと言うと解散から約2年、辛くて何も聴けなかったんだけどこの間ようやく踏ん切りをつけてstayを聴いて号泣した程度である)(重い)
(ちなみに一番好きな作品は『僕の歩く道』と『任侠ヘルパー』ですがこの話は長くなるので今日はやめます)



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久しぶりの日生で、ミッドなんとか日比谷に初めて行ってきたんだけどチョイ飲みできるコーナーが多すぎて開演前に飲みすぎたよね???(最低だね?)
最近有楽町界隈から縁遠かったんだけど最高のスポットだなあそこ!!!来年はわりと行く予定なのでよろしくなミッドタウン日比谷!



バリータークが観られなかったので危険なふたり以来の剛くんの舞台でした。
海宝氏と共演すると聞いて頭の中に「!?」というマークが10個程並ぶには驚いたよ。えっだって、えっ?
でも剛くん、市村さんとも共演経験多いし仲良いもんなあ。意外にミュージカル界と接点があったりするのだ。



しかし ほんとに チケットが 取れねえ




別に何回も行くつもりはないから1回取れたら御の字なんだけど、、地図FCで取れた人は本当に少ないみたい。
他の出演者の方のFCなら結構取れたのかな…
私はカード会社先行でなんとか滑り込みました。ありがとうなニ○ス。






予備知識、ゼロでした。あえてあらすじも読まなかった。
こんなに暗くて苦しくて、生きることの苦しさが伝わるお話だと思っていませんでした。



バンクーバー五輪シーズン、大ちゃんが映画版の音楽を使用したのであのニーノ・ロータの曲だけは印象に残っている(舞台版では使用されないけどね)



筋肉を使った芸で路銀を稼ぐ大道芸人ザンパノと彼に付き添う純粋な少女ジェルソミーナのお話である。
ザンパノはぶっきらぼうで教養がなく女好きで、すぐに頭に血が上って喧嘩をする。
ひとつも良いところがないような役だけどなぜか嫌いになれない。
ジェルソミーナは自分の生きる意味を見出せずに最初は言われるがままにザンパノに付き従うが、次第に理由もわからぬまま彼と一緒にいたいと思うようになっていく。
イルマットは享楽主義の道化でサーカスで綱渡りをしながら暮らしている。いつか自分が死ぬことになるだろうと思いながら。
ザンパノとイルマットは旧知だけど犬猿の仲で、イルマットはザンパノを見るとからかいたくなるしザンパノはその度に怒り狂って彼を追い回す。
イルマットは希望を失ったジェルソミーナに「小石にも生きる意味がる」と教えて、どんなものにも存在する限り何か意味があるのだと言う。



ジェルソミーナは『純粋』を具現化したような存在だったのかな。本当の純粋とは生きることの辛さも死ぬことへの恐れも全て乗り越えたところにあるのかもしれない。
彼女にしか見えないクラウンが、ジェルソミーナの存在は異次元にあるのだと理解させてくれたけれど、彼女自身から普通の人とは違う存在だというオーラは少し伝わらなかった。演出的な問題もあるのかなと思う。
ジェルソミーナは苦しい生の中で本能のままにもがき続けるザンパノに生きることの希望を教えてくれる存在だったけど、ザンパノは彼女を失うまでそれに気付くことができなかった。だけど彼女を失ったことでザンパノは最後の最後に獣から人になることができた。道端の石ころにも生きる意味があるのだとすれば、ジェルソミーナの生きる意味はザンパノにそれを教えて彼を人間にすることだった。彼女は死ぬことで生きる意味を手に入れた。生と死は対極な存在でありながら常に表裏一体でもあったのだ。





◎剛ザンパノ

ザンパノは筋肉という鎧で自分という矮小な存在を隠していた。それくらい本当の彼は弱くて小さくて子供のように怯えていたのだと思う。
粗野だし汚ならしいし女を見ればすぐに追いかけるし、もうクズの中のクズなのだけど何故だか放っておけない。
自分の弱さを認めたくない不器用なその姿がどこか哀れで痛々しい。ダメな男に惹かれる女は多いのだ。

私見だけれど、剛くんは男らしさが強調される役の方が似合うと思っている。ザンパノはまさにそのタイプで自分の中の『男』を誇示しないと生きていけない。
その男臭さを人を惹きつけてしまう色気として表現する生のパワーを持っている俳優だからこそ彼はザンパノに選ばれたのだと思う。



声はね、どうしちゃったの!?
あれは作ってるの…!?私が知っている剛くんの低音は翼彦一で、全く普段とは違うトーンながらも剛くんの特徴はしっかり入っている声だったので今回は全く違っていて驚いた。でも私剛くんの素の声が本当に大好きなので、、もう少しそれを出しても良かったな。
滑舌については声を潰しているのもあって普段以上に良くないなと感じました。
(元々滑舌いいほうじゃないので…)
大きい箱向けの俳優じゃないかもなあ~。でも日生で観られたこと、嬉しかったよ。




◎海宝イルマット



俺たちの海宝直人、滑舌が良い。



ごめん周りの滑舌がアレなので


そこまで海宝氏が演じた役を観てきたわけじゃないけれど、海宝さんがやるタイプの役じゃないので意外だった。かっきーあたりがやりそうじゃん。
だけどとても良かったです。ザンパノと全く正反対で優しくておどけていて常に色々考えているけれど、底に抱えている渦巻くような虚無はザンパノと全く同じそれを感じさせた。背負っていた羽根も、ジェルソミーナに語るその口調も、生き様も、全てが軽いのに、その軽さは見せかけだけできっとあの羽根は1枚100㎏くらいの重さがあるのだと思った。
生業の中で死ぬと考えていた彼があんな些細なことで死んでいくとき、彼もまた生きることの意味を見いだせたのかもしれない。海宝イルマットはまるで生きるように死んでいったから。1回観ただけで掴めるような役じゃなかったけど死の瞬間まで振り切れていたし海宝くんはやっぱり巧い役者さんだな。




◎その他

なんかたまにかわいい子がいるな、と思うと耕平くんでした(は?)


ジェルソミーナ役の蒔田彩珠ちゃんはドラマとかで活躍する女優さんみたいだけど、ジェルソミーナの神秘性というか良い意味での普通じゃなさを出すには少し若すぎるのかなと思った。でも少女であることで、無垢な存在がこの世で受ける仕打ちの残酷性は増したのだろうか。


ステージシートはエクウスと全く同じ造りで客席から見て真正面、舞台後方にあるのだけれどあの席は見辛いだろうな。何回も観る予定があるのなら1度くらい座ってもいい席かもしれない。我々は楽しさも辛さも可笑しさも悲喜こもごもの感情を享受できる人生という名のサーカスを観る観客に過ぎないのだ、という演出なのかもしれないね。








任侠ヘルパー』は最高傑作なので、見よう?(宣伝)