Comment lui dire

アラビアンコースト

『カモメに飛ぶことを教えた猫』は自分の生き方を見つめ直させてくれるお話でした。 2019/4/20M @相模女子大学グリーンホール

私は大人になった今でもいわゆる「子供向けに作られた」作品が大好きです。
子供が見て楽しいものは大人が見ても楽しいと思うし、子供の頃には理解できなかった『物語の奥行き』というものを感じられるようになりました。人間は辛いことや楽しいこと、良いことや悪いこと、様々な経験を経て大人になっていきます。だから同じ物語から受け取れる感情も歳を重ねるに連れて何倍にも大きく、そして豊かになっていくと思う。


ファミリーミュージカルというジャンルは確かに子供向けではあるけれども、単純な物語の中に現代で生きていく人間が抱える悩みや苦しみ、そして生きることへの希望や喜びといった大人だからこそ受け取れるメッセージもたくさんあります。



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アンデルセン』全国公演以来のグリーンホールでした。
てか関東公演少なくね???






この『カモメに飛ぶことを教えた猫』というお話、原作はチリの小説家ルイス=セプルベダが自分の子供たちのために書いたという児童小説だそうです。ドイツが舞台なのでドイツ人が書いたのかと思っていました。原作は未読なので読んでみようかな。


ハンブルグの街で仲間たちと気ままに暮らすちょっと気性は荒いけど優しい黒猫「ゾルバ」が、ある日瀕死のカモメの母親から卵を託されて、彼女と交わした3つの約束を果たすため、卵から孵ったカモメのヒナ「フォルトゥナータ」を仲間たちと一緒に育てていくお話です。


今までそんなに多くのファミミュを見てきたわけじゃないけど、他のファミミュと比べて大分骨太な内容だなと感じました。
登場人物は動物しかいないけれど殆ど人間と変わらない見た目で衣装でその動物の特徴の一部を表しているだけだし、台詞回しや悪役のキャラクター性、そして物語の根幹である『異種族間の絆』『一歩踏み出す勇気』というテーマを含めて、夢醒めあたりの子供も楽しめるミュージカルくらいの立ち位置じゃないだろうか。
あと意図して演出されているのかはわからないのだけど、色々なミュージカルのオマージュに感じるシーンがたくさんあるのでミュージカル好きな人ならもれなく楽しめる大人向けファミリーミュージカルだと思います。





◎以下ネタバレ

突然ハリポタの話をします。
映画版の2作目『ハリーポッターと秘密の部屋』にダンブルドア「自分が何者であるかはもって生まれた才能で決まるのではなく自分がどういう選択をしたかで決まる」という台詞があります。私はこの台詞が大好きなのだけど、この理論は現代心理学でもポピュラーな考え方だそうで、「自分が持っているものを最大限に活かしていく力」が生きていくうえでは一番重要だということ。


『カモメに飛ぶことを教えた猫』において、フォルトゥナータは自分を猫だと思い込み最初は空を飛ぶことを拒否してしまうし、猫はカモメを食べるものだと知ってからは猫たちに育てられたカモメである自分について思い悩むことになります。
だけどゾルバや周りの猫たちの自分に対する種族を超えた愛に支えられていることを知って、彼女は空を飛ぶことを決意しました。自分を信じてくれたゾルバを信じて、自分の力で一歩足を踏み出したのです。
フォルトゥナータには空を飛ぶ力があったけれど、行動に移すことができたのはゾルバからの信頼と愛情、そして彼女自身がそれを選択したからなのだと思います。彼女が「カモメだから飛べた」ということはほんの些細な事実にすぎなかったのだと思っています。

飛び方の演出も良かったなあ、ウィキッドのDefying Gravityと似てるよね。

大人になると『前に一歩踏み出そうとする』ことに臆病になってしまうし、自分の居場所はここじゃないと思っていても様々な社会のしがらみの前では無力さを痛感することもありますよね。
この物語は異種族間という限定的なお話ではあるけれど、現実においても出自や性別その他様々な理由で自分の意志とは裏腹にカテゴリ分けされることもあるし、自分を守るために他者との違いを認識して納得することもあります。
今一度、自分がなぜここにいるのかではなくこの先どうやって生きていくのか、何を選択するのか…自分を見つめ直すのもいいかもしれないなと日々辛い現実の中で生きている疲れた大人である私はこの作品を観ていて思ったのでした。



受け取り方、激重い。(一応ファミミュやぞ)




◎マチアスおいしい(マチアスおいしい)
ゾルバたちとは敵対してるんですけど根っからの悪人というわけでもなく、行動理由も復讐でゾルバにも非はあるので憎めない。
あと在りし日の彼を彷彿とさせる看板が飲んだくれの現在の姿の後ろでキラキラと輝いてるんだよね。良い演出だし泣かせてくる。
町田マチアスはどう略せばいいの?町アス?(そのまんま)
町田さんだと普通にマチアスがかっこよくて、本来の彼というか在りし日の彼を思い起こさせるのにうってつけでした。
明戸マチアスはたぶん壁抜けに出てくるでしょ



笠松ゾルバについて

だから何度も言っているんだけれど笠松氏のような醤油顔に猫っぽいつり目メイクは死ぬほど合うんだって!!!!


笠松ゾルバ=(笠松ランパス+笠松アラジン)÷2


ゾルバ、もっと粗野なイメージを勝手に持っていたんだけれど目上の者にはちゃんと敬語が使えるいい子だし、猫の習性でネズミ追っかけたりはするけど別に乱暴者ってわけでもなかったです。演じる人が笠松氏なので余計にいい子に見えるのかもしれません。わたしは笠松くんの魅力はふとした瞬間に見せる男らしさでもあると思っているので、ゾルバかっこいい!って何度も思っちゃったし仲間たちにも慕われる性格だってすごく納得できた。
もうゾルバの設定がほぼ8割くらいアラジンなのでアラジン俳優を使ってくれてありがとうな…という気持ちでいっぱいです。(厂ちゃんゾルバ早く見たい)






あとはカテコの演出でガチ泣きした!!!
お見送りで志村さんと握手できて超ハッピー!!!!!
以上です!(雑な終わらせ方)